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これはジャーナリズムの諷刺であるが、この結論にしたがって、立派な部屋に胃ブクロの絵を書いているのが、二科の謎々だと思えば、まず間違いはない。
もっと高尚で複雑だという作者があれば、イヤ、それはもっとデタラメで本人もワケが分らんという意味だ、と私は言いかえすツモリなのである。
「魚眼レンズ」の諷刺は、文章によって巧みに戯画を描いてみせている。最後の結論に至って、諷刺の本領を発揮し、巧みに視覚的な幻像を与えている。しかしこれは文章に構成され、最後に視覚に訴えるまでの文章の綾があって、はじめて戯画が生きてくるのだ。これは視覚に訴えるにしても、文章の力であり文章の世界なのである。
試みに、「魚眼レンズ」に最後の結論だけをのせて、「立派な部屋にはいつも胃ブクロがいる」と云ったところで、なんの力もない。諷刺にもならなければ、謎々の問題にもなりやしない。この謎々をとけ、それが文化というものだ、知識というものだ、とでも考える仁があるとすれば、滑稽怪奇ではないか。
ところが、二科の教祖ならびに弟子は、概ね、これをやらかしているのである。
絵は言葉によって語るものではなくて、色によって語るも
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