おくれて、仲よくはるかドンジリとなり、誰も考えてもいなかったコンノが優勝し、東二着とある。コンノ強しというのは二日目からの話で、初日はコンノなんて選手の存在を知らない人が多かったのである。
 競輪なら大穴である。単もフォーカスも、一枚も売れていなかったかも知れない。むろん、私も、はずれていた。千米ぐらいから、観衆は総立ちとなり、
「マーシャル!」
「橋爪の野郎殺しちまえ!」
 一同マーシャル橋爪のフォーカスを買っているに相違ないから、レースが終るや、ナダレを打って事務所へ殺到、神宮水泳場焼打ち事件となる。
 日米水上の観衆は、そんな不穏な精神はもっていない。コンディション不良のマーシャル橋爪をいたわる心事は場にみち、奥ゆかしい極みなのである。
 日本は対抗競技には惨敗したが、レースはいずれもタッチを争うていの大接戦で、力量に大差があるわけではない。
 意外だったのはバタフライで、アメリカ選手のバタフライの美しいこと、手がスッポリと水からぬけて、キレイに前へ廻ってくる。私も自分でバタフライのマネゴトを試みようとしたことがあるが、もう腕の力がないから、全然手がぬけない。強大な腕力がいるもの
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