そして、美姫の一人を恋人として、彼女の部屋へ行くのである。
又、二百人の美姫が全部踊ることはできないから、四ツかの組にわけて、一晩に一組だけ踊る。他のホールに現れざる四分の三に恋人がいるかも知れぬと思う人は、彼女らの部屋の方をさがせばいい。
彼女らのハレームは五ツの棟にわかれている。各々二階建である。
さて彼女らの各々の部屋であるが、これが、ちょッと、こまるんだねえ。つまり、これは、一度はハリツケにかかるという宿命を行うためであるから、仕方がないように出来ているのだなア。
戦争中は二十人か三十人の白ハチマキがねていたと思われる大きな一部屋を、まず、横に二つに分ける。前方と後方に二分するわけだ。前方は、ちょッと喫茶店めいてイス、テーブルがあり、ちょッとした炊事場みたいなものもついている。後方を四ツか五ツに区切って、この広さが二畳半かな、ここが、彼女らの部屋だ。区切れ目がよくて、窓に当った部屋はいいけど、四分の一、ひどいのは五分の一ぐらいしか窓にかからんのが在るんだなア。
巷談師は予言者の宿命を行うためらしく、五分の一しか窓に当らぬ部屋へ静々と招ぜられたのである。しかし美姫は巷談
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