で、閑古鳥はなき、美姫は立ち去り、事志とちがって、大いに困っているけれども、美神アロハの大魂胆が全然影を没するということは有りえない。かの人物が言うように、銀座のナンバーワンが二百人集っているというのは逆上的であるけれども、ストリップの踊り子ぐらい、ザラにいるなア。こッちの女の子をハダカにすれば、東京と大阪のストリップ劇場を占領して、オツリがくるほど人材がいるんだぞ。田舎まわりの因果物みたいな変な子はいないんだぞ。昨日までは、もッと、いたんだぞオ。だけど、だんだん、へるんだぞオ。
美神アロハは復活した。そは実に、持てる者は幸いなるかな、という福音をひろめるためであったのである。
それは又、ストリップや、射的屋の蔭に腕をさする女レスラーや、今か今かと男の子がさそいにくるのを陰にこもって待ちかまえている壁際のダンサーや、すべて異端の貧しく持たざるものを放逐するためでもあったのである。
ダンス・ホールは八時半だか九時だか九時半だかに終る。茫漠として、私はその時刻が何時であったか記憶がないが。そのときに時計を見て時刻などを知るという落付きが、それほど賞讃されたことではないのであるな。
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