安吾巷談
田園ハレム
坂口安吾
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)輿望《よぼう》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)伏見|中書島《ちゅうしょじま》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チョロ/\の
−−
大戦争のあとというものは何がとびだすか見当がつかない。日本全土の主要都市が焼野原だから、どういう妖怪変化がとびだしても不似合ということはない。
覚悟はしていたことだから、パンパンやオカマや集団強盗など月並であったが、アロハにはおどろいた。
なにぶん、アロハというものは、妖怪として登場したものではない。ともかく焼跡にも建設的な気風が起り、いたずらに戦争の惨禍を身につけてデカダンスに身をもちくずしてはいかんというような大方の輿望《よぼう》にこたえて、美とは何ぞや、これである。戦後、美意識の初の出動がアロハであったから、この次には何がでるかと思うと、怖れおののいたのである。
ストリップなどゝいうものは、着物をぬげば誰でもなれるのだから、創造せられたもの、衣裳とよぶことのできない原始風俗であるけれ
次へ
全28ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング