人のウチへ来たような気はしなかろう。お膝を楽に、などゝ云われなくたって、お膝を楽にする以外に手がないという小屋だからである。この効果はマグレ当りであるがこの小屋の強みであることに変りはない。
ここのストリップは、表情のクルクルうごく子が、変に新鮮で可愛らしい。素人あがりで、見よう見マネで一人でやってるのだそうだから、天分があるのだろう。あとの子は昔ながらの浅草レビュウで、体をなしていない。
男と女が現れ、クロール、ブレスト、バタフライ、水泳をまねた踊りをはじめた。ストリップの踊りとしては新鮮な思いつきだと思って、見ていると、踊りがダメで、ハシにも棒にもかからぬものになってしまった。
芸である。ほかの文句は無用、芸が全部だ。こういうデコボコ・バラックで見るにたえる芸人をとりそろえると、時代の名物になる可能性は甚だ多い。旅の心、ノスタルジイとか、ふるさと、などゝいうものに、小屋自体の雰囲気が通じているからである。
★
気がつかないと、なんでもないが、ズラッとみんな男だけ、それも相当の年配なのが、目玉をむいてギッシリつまっているというのは、それに気がつくと、ど
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