御飯ぬきで、ヒロポンを打って舞台へでる。メシを食うより、ヒロポンが安いせいで、腹はいっぱいにならないが、舞台はつとまるからだという。それでも浅草と別れられない。それが浅草人種の弱身でもあり、強味でもある。
 ストリップをやりだしたら、にわかに客がふえた。そこで舞台をひろげて、楽屋をくッつける。又、デコボコがふえたのである。うしろはズッと焼跡だから、もうかり次第、まだデコボコのふえる余地は甚大である。表から見たところでは、とにかく便所はあるだろうが、楽屋などゝいうものが在るようには見えないが、三畳ぐらいの小部屋が六ツぐらいも、くッついている。ちゃんと一通りそろっているのが手品のようなグアイで、おもしろい。しかし、客席から楽屋へ行くというような器用なことはできなくて、外をグルッと一周しなければ行かれない。
 この小屋はデコボコ・バラックの雰囲気によって、おのずから成功の第一条件をにぎったといえる。このデコボコは、たくんで出来る性質のものではない。社長、従業員、支配人、案内係りなどゝキチンと取り澄まそうたって、このデコボコが承知しやしない。イヤでも家族的にならざるを得んじゃないか。見物人も他
前へ 次へ
全20ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング