者をつれてきて痛い思いをさせてやる。どうだ。痛い思いをしたいか。したい奴は、でてこい!」
 と、睨み廻す。敵地へのりこんだ如くに、はじめから、社員を敵にして、かかっている。
 O氏が編輯長として九州からよびよせたHという新聞記者出身の柔道五段がいた。柔道五段というが、大言壮語するばかりで、編輯の才能は全然ない。大ブロシキの無能無才で、ふとっているが、テリヤよりも神経質で、ヘタな武道家によくあるタイプだ。
「売れなくてもよいから、アッ、やったな、と言わせるような雑誌をつくってみせる」
 という。こういう低脳のキマリ文句で右翼のチンピラが大官を暗殺するような心境で雑誌をつくられては、たまったもんじゃない。私も我慢ができないから、
「冗談云いなさんな。金もないくせに売れない雑誌をつくったって、つぶれるだけじゃないか。ぼくがこの雑誌の同人になったのは、Y氏の出版事業がつぶれそうだから助けてやってくれないかというO氏の頼みで、Y氏をもうけさせてやるのが目的だ。アッ、やったなといわせるために誰がお前さんにたのむものか。もうける以外に目的があったらこの雑誌の編輯はやめなさい」
 と云ったら、それ以後は、私の顔を見るたびに、
「もうける雑誌、もうける雑誌」
 と意気ごんでみせ、たちまち大モウケしてみせるようなことを言うようになったが、実際は、アッと言わせるのはカンタンだが、もうけるのは大事業なのである。
 このH編輯長がなんとか組のなんとか氏とカンタン相てらしたと称し、兄弟の盟約をむすび、兄貴、わるいところがあったら、だまってオレの頭をなぐれ、などゝオイオイ泣き、こういう低脳がでゝくると、もうダメである。なんとか組のなんとか氏はH氏にくらべてはもっと大人で、そうバカではなかったらしいが、間にH編輯長という低脳で神経質で被害妄想のようなのがはさまっていて、それを通じての話をきいているから、まるで敵地へのりこむように出社して社員をどなりつけた。
 ここの社員は主としてO氏の弟子に当る若い連中で、O氏の一族ではあるが、私とは何のユカリもない連中であった。けれども、H編輯長もO氏の選んだ人物、なんとか組のなんとか氏もO氏のたのみで金をだした人物で、O氏の知人であるから、H氏やなんとか氏への不満をO氏のところへ持っていっても、とりあげてくれない。そこで私のところへ泣きついてきた。
 吉井君も
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