るワケだが、競輪は大穴がでる、穴狙いにかぎる、という見方が定まって、穴狙いの専門家が続出すると、どの券にも相当数の買い手がついて、どんな大番狂せがでても、三千円五千円ぐらいしか配当がつかないようになるのである。
 私の見た東海道某市の競輪は、穴のでる競輪場だと予想屋がしきりに絶叫していたが、たぶん、そうだろうと私も思った。
 なぜなら、ここは観衆が少く、東京方面から来る人も少い。したがって、売り上げも少く、配当も悪いとみて、競輪専門の商売人もあんまり乗りこんでこないらしいのである。したがって穴狙いの専門家も少いから、観衆の大多数が本命を狙い、売り上げは少くとも、穴が当ると、二万、三万の配当がつく。
 東京周辺の観衆の多い競輪場では、穴狙いの人種も多いから、売り上げに比較して、どんなボロ券にも相当以上の買い手がついており、結局、どんな大番狂わせがでゝも、配当は三千円ぐらいということになる。都会地に穴レースが少いのではなく、常に大穴レースは行われているのだが、穴狙いが多いので、配当が少くなって、表面上大穴にならないというだけのことだ。
 私の出かけた競輪場でも、大穴は午前中にでる、と云われ
前へ 次へ
全25ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング