ムキに恋愛に突入したであろう。
すべて第一級の人物とは、事に処してヒタムキであり、高い理知と同時に、常に少年の如く甘い熱血に溢《あふ》れているものだ。
ナポレオンを見たまえ。世界をあらかた征服しながら、なッとらんラヴレターをかいて千々にみだれているではないか。
だいたい代議士諸公は、策が多すぎるよ。政策が乏しいくせに、生活上の策が多すぎるのだ。
ナポレオンをひきあいに出しては気の毒であるが、彼は戦争は巧みで、政治に又、手腕があったが、生活上には無策で、諸氏の足もとには遠く及ばなかった。
生活上の策などは、いくら巧妙でも、政治のプラスには全然ならない。こういう生活上のカラクリを政治的手腕だと思う日本の政界のレベルの低さは、度しがたいものがある。
しかし、ともかく、茶番は終った。
御両人の政治上の生命も、結婚生活の生命も、今後にかかっているだけのことだ。今からでも、おそくはないのである。
恋愛に生きることは、政治に生きることである。同時に、不本意な恋愛ならば、解消するのが、政治的に生きる方法でもある。恋愛自体はカラクリがなく、スッキリしていれば、おのずから救いがあるものだ。
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