だけではない。作者の思想が品格を決定する。右の二つの文章から、作者の思想をさがせ。
(試験問題)
だから、新聞というものは、事実の正確な報道だけをムネとして、記者の感情や批判をミジンも出さないようにすれば、私のような三文文士にケチをつけられる筈はないのである。
二三カ月前、読売新聞だけがこの恋愛をスクープしたとき、女史の父正一氏が狂的な怒りをあらわして、天光光は自分が育てた子供だから自分の意志の通りに行動させる。きかなければ天光光を殺して一家心中する、という大変な見幕であった。呆気にとられたのは私一人ではなかった筈だが、これとても、骨子は狂ってはいない。つまり正一氏が結婚反対の理由としてあげている骨子は、
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一、政治意見の異る二人に結婚生活は両立しない。
二、男には妻子があり、天光光のために妻子をすてた。したがって、他の女のために天光光をすてる危険がある。
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いかにも当然な心配だ。
この二つの事柄については大いに論議の余地があるが、娘の父たる者が、最も常識的な立場で不安を感じるのに不思議はない。
けれども、他の
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