しかし、自由意志にまかせておいて中毒の禁断苦と闘うのは苦痛で、大決意をかためながらも、三回だけ、藤井博士から催眠薬をもらった。二度はきかなくて、三度目に、特にオネダリして強烈な奴をもらったが、それだけでガンバッて、とうとう禁断の苦痛を通過し、自分で退治ることができた。今はもう、一切薬を用いていない。
病院へ入院し、強制的に薬を中絶された場合には、私のように三度オネダリすることも不可能で、完全に一度も貰えないのであるが、自分の自由意志によって、そうなるのではないから、ダメなのである。だから精神病院の療法はこの点に注意する必要があって、二度や三度は薬を与えても、患者の自由意志によって治させるような方向に仕向けることを工夫すると、中毒の再発はよほど防ぐことができるのではないかと思う。これは中毒のみではなく、精神病全般について云えることで、分裂病などでも、あるいは自覚的にリードできる可能性があるのではないかという気がするのである。
とにかく、精神病(中毒もそうだろう)というものは、親しい友だちに頼むに限る。私は幸い、女房が石川淳と檀一雄をよんで急場をしのいでもらって、その後も適当の方策をめ
前へ
次へ
全24ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング