独感から、ツイ生ききれない思いで、一思いに死にたくなる。その誘惑とは私もずいぶん、たゝかった。一度、本当に死ぬつもりになったことがある。そのときは、女房が郡山千冬に電報をうって来てもらって、どうやら一時をしのいだが、それ以来、発作の時は親しい人をよぶに限ることに女房が気付いて、二度目の時には石川淳と檀一雄に来てもらったのである。そして、渡辺彰、高橋正二という二人の青年を泊りこませ、その他、八木岡英治や原田裕やに、夜昼見廻りに来てもらうというような、巧妙な策戦を考えてくれた。
そうして私が気がついたとき、私は伊東に来ており、私の身辺に、四五人の親しい人たちが泊りこんでいるのを発見した。
結局中毒などというものは、入院してもダメである。一種の意志薄弱から来ていることであるから、入院して、他からの力や強制で治してみても、本来の意志薄弱を残しておく限りは、どうにもならない。入院療法は、治るということに狎《な》れさせるばかりで、たいがい再中毒をやらかすのは当然だ。結局、自分の意志力によって、治す以外に仕方がない。
私は伊東でそのことに気付いたから、あくまで自分で治してみせる決意をたてたが、
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