ヒヒヤ」は「獅子や」であろうというのが一部の人々の臆測であるが、一応そう見ることも不自然ではないようだ。すると、「ドコニウ、ヒヤヒヤ」は「どこにも居ない居ない」らしく、すると冒頭の「ヒ、ヒヤ」は「アア、居ない」というような日本語に訳すべきかね。
だが、その段の内容と睨み合せた上で、音が適当の日本語にほぼ通じているために、これを日本語にこじつけうるのは、この部分だけである。同様の手段で他の段を日本語化する手がかりは完全にないのである。
しかしながら、他の段が同様の手段で日本語にこじつけることができないから、これを日本語にこじつけるのは不適当だとは云えない。なぜなら、全然日本語の歌詞を使用している段もあるし、「チトラル」のように全然異質の音で構成された段もあるからである。だから、この牝獅子隠しの段に限って、
「アア、居ない、どこに行ったか行ったか。
獅子は、どこにも、居ない、居ない」
と、ほぼ音を辿って日本語にこじつけても不適当ではないばかりか、その内容に非常によく当てはまりもするのである。
こう考えて改めて笛の音にきき入ると、モウイイカイ、マアダダヨオ、という子供たちの隠れんぼ
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