れないけれども、それにしても甚しく滑稽なような、ノンビリしたような奇怪でバカバカしい暗合ではある。
こんな言葉を実用していた人たちがアイウエオを運搬したとすれば唇音の濁撥音記号を他の音につけまちがえたのはちッともフシギなことではない。しかし、これがそっくりコマの実用語だとは云えないだろう。
一部に日本語の歌詞をモツ段もあるように、一部にはコマと日本語の中間的なものや、一部にはたしかにコマ語の部分もあるし、他国語の部分もあるかも知れぬ。そして、まさしく笛の譜に当る部分もあるのかも知れない。
しかし、現在の笛の音はどの段をやっても同じで、それをこの譜で表すとすれば、
「ヒヤロー、ヒヤロー。
ヒヤ、ヒヤ、ヒヤロー」
とでも表せば充分だ。それ以外の音律が吹奏せられることはない。そして、はじめの二ツのヒヤローが各々「モウイイカイ」と「マアダダヨー」に当るのである。
牝獅子隠しの段で、獅子がササラッ子のマン中へ隠れ、牡獅子が探しまわるときに、音譜は
「ヒ、ヒヤ、ドコニイタイタ。
ヒヒヤ、ドコニウ、ヒヤヒヤ」
と綴られており、「ドコニイタイタ」は「どこに行ったか行ったか」であろう。「
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