質的には凡そ番犬に適しない。むしろ狩に用いた方がやや効能があるのではないか。私はバクゼンとそう考えるようになった。
★
私がこのように日本犬について悲観的な考えを持つようになったのもチャチな日本犬を飼ったせいだ。日本犬の中にも外国種に負けない犬がいるかも知れぬ、ということは私の長い疑いであり、希望でもあった。
こう疑って然るべき理由がハッキリ存在するのである。
皆さんが犬屋で日本犬の仔犬をもとめる場合に、これは何犬ですか、とお訊きになると、たいがい犬屋は、
「秋田犬です」
と胸をそらして答えるのが普通である。こうして今では日本犬といえば、大半が秋田犬。東京には秋田犬がウジャ/\いることになっています。そして秋田犬にも小型、中型、大型と三種あることになっており、犬の品評会にも三種の秋田犬がそれぞれ出品されて、別々に審査をうけるのである。
しかし、小型、中型は秋田犬というべきではなくて、日本犬というべきだ。耳が立って、シッポのまいた犬は日本の各地にザラにいる。むろん秋田にもいる。チャウチャウもそうだ。それらの中に大型秋田の血が一度や二度まぎれこんだにしても
前へ
次へ
全40ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング