が宝塚の難民は主として若い女、女学生と、その姉妹に当る年齢程度の女の子が大部分なのである。よその土地ではこの年ごろの娘がパチンコをやったりボットル落しをやったりするのは常識でもないし、殆ど可能性ですらもない。ところが他の土地では可能性ですらもないことを彼女らはこの土地では必ずやると看破した宝塚商人の眼力というものは、これはまた世に怖るべきものだなア。
 可能性ですらもないなどゝは、とんでもない話だね。ここの縦横の廊下に、パチンコ屋だのボットル落しだのホームランゲームだのと、その店の数だって人口三万の東海道の温泉都市と覇を争うほどの盛大なものだ。その全ての店内の全てのパチンコ台も空気銃もみんな女学生に占領されて、ガッチャン、ガッチャンと賑やかなものですよ。
 彼女らは短気だねえ。ゲームを味ったり、哄笑によって敗戦を認めて思いきりよく諦めるような寛大なところも、ユーモアもないらしく見える。必ず勝たねばならぬ、否、敵を倒す、否、一撃もって敵のノドクビを切断する、というような気魄が充満しているし、寸時といえども攻撃がゆるみ、斬り込みの脚力も刀さばきも休むようなところがない。マナジリを決するとは
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