一貫していることだけはハッキリ感じられますよ。
 ひろい天地をめざしてバラックへ引越すのは、どういうもんだろうね。まア庶民住宅はバラックに相違ないが、芸術家はどんなアバラ家に住んでも、彼の住む限りはバラックではないものだ。
 ひろい天地の芸術家でありたいと思ったら、宝塚少女歌劇そのものを、女子占領軍専用から解放して、ひろい天地のものとするように一考し努力さるべきであろう。
 なぜなら宝塚は劇団そのものがユニックでもあるし、その技術水準も、他の劇団や映画にくらべて低い方ではありません。私は「雲の会」の会員であるから、文学座を見物したり、新劇運動を応援したりする義務があるけれども、宝塚の生徒さんにくらべると、新劇の女優さんは女子大学を卒業あそばしたりして大そう学がおありだけれども、芸術というものは、学だけではどうにもならない。眼高手低は芸術にならないのである。見ているとハラハラするから、たのしむというわけに参りません。
 宝塚の生徒が新劇がやりたかったら、新劇へ加入するよりも、自分たちだけで新劇もやってみることだ。その方が万事につけてユニックだ。どういう新劇が現れるか知れんけれども、とにか
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