。ところが日本平定の大事を忘れて大国主の娘と良
い仲になって八年たっても帰らない。そこで使いの鳥を偵察にやったらワカヒコは鳥を射殺してしまった。その矢がタカマガ原の大神のところへ飛んできたから手にとって見ると血がついてる。それを下界へ投げ返したらワカヒコの胸に突き刺さって死んだという。これも両面伝説の一ツで、五瀬命や忍熊王やスクナと同じく矢で死んでいる。殺した方は天皇側で、自分の肉親の大神であることは、古事記の日本武尊が天皇に殺されたのと同じい。
 天ノワカヒコとは兄弟ではないが、アジスキ高根彦という親友がいて、友の死をとぶらいに来た。ところが顔がワカヒコとそッくりだから、アッ生きていると云って遺族がすがりついた。するとアジスキはオレを死者扱いは何事であるかと刀をぬいて喪屋を切りふせ足で蹴って突き離した。美濃国の藍見河の河上の喪山がそれだと云う。
 つまりワカヒコの喪屋は切りふせて蹴とばされて離れ去っている。これは日本式尊の白鳥伝説とカラの墓にも似ているし、五瀬命やスクナが矢で殺されて後、死所や墓所がハッキリせず、伝わる死所と墓所の位置とが離れているのにも似ている。
 そして、美濃の藍
前へ 次へ
全58ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング