きめるのは不可能なことだ。
坂口先生からきいた話だが、大島からのツバキ油売りと名のる行商人がきた時に、その真偽を見破るカンタンな方法があるそうだ。もっとも今では行商人となって島外へでる者は一人もないから、鑑定をまつまでもなく、みんなニセモノにきまっているそうだがね。
大島島民は「カキクケコ」を「ハヒフヘホ」に発音するのだとさ。柿の木が「カヒの木」、猫の子が「ネホの子」、筍が「タヘノコ」。但し接続する時だけで、字どまりの木や子は同じキでありコだそうだね。
三宅島には排外的な気風がやや目立つそうであるが、大島の人たちは、男女ともに明るくて、人みしりしなくて、親切である。どうも全般にわたってタメトモの住みよい島にできてるようである。野増村の着流しの村長は私が大島で会った人たちのうちで誰より無愛想でニコリともしない人物であったが、根は甚しく親切なようであった。実に気むずかしくムッツリしながら、しかし私の方が降参するほどもう一軒、もう一軒と念入りに案内してくれる。魚屋の前を通りかかると、にわかに店内へ声をかけて、
「さッきのアレ、こまかくしたかね。まだなら、東京の人に見せてくれないか」とい
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