神意か人意かという水カケ論になって、論より証拠、自分で担いでみなさい、ということになった。きわめて然るべき結論だね。そこで検事と判事が十六人ハチマキをしめて現れて、これを担いだというのだね。
するとネ。そのミコシが検事と判事に担がれてヒューと一気に表参道の急坂を駈け降りたとさ。アレヨと見るまに、後向きでヒューと上まで駈け登ったとさ。それから市街へとびこんでメッチャクチャ暴れたとさ。
裁判所へ行って記録を調べたわけではないから、ホントかウソか請合いませんよ。しかし、むろん、伝説だろうねえ。伝説中の新型だね。判事と検事が登場してハチマキしめてミコシを担いで暴れるという創作はわれら文士以上の手腕ありと認定せざるを得ない。
こういうたのしい話をきかせてくれる市役所だけあって、この市役所の建物が、オモチャのように滑稽古風で、シルクハットで中へはいって行きたいような気持にさせられる。横浜や神戸の洋物の骨董屋の店内へ、むろん店内へははいらないけど、並べておきたいような市役所でした。むかし、むかし、大昔、宮城県庁だった建物だとさ。その古物をタダで貰ってきたのだとさ。
塩竈は松島遊覧の出発点だ。
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