取り扱い、さてこそ白衣赤袴の娘さんが続々と入用なのだそうだ。
 仙台藩の城下から追放した遊女屋はこの神様の真下、表参道の鳥居両側にズラリとあるのだが、高尾を斬った仙台の殿様の虚無的な皮肉なのだか、敬神の思想によるのか、全然判断がつかねえや。神詣でのフリして遊女屋へ行けという非常に至れり尽せりの思いやりかも知れないな。今なら、PTAが怒るだろう。
 安産からさかのぼッて結婚式に到るまで、神様自体が手びろく営業しているように、この神様の表参道入口には遊女屋が神恩を蒙って営業し、裏参道入口にはサフラン湯本舗というのが同じく神恩を蒙って営業しているよ。これ即ち何物かと云えば、中将湯と同じような血の道とやらの薬だとさ。サフラン湯主人は昔へルプという薬の広告にあった美髯《びぜん》の色男によく似ていたよ。安産のお詰りついでにみんな血の道とやらの薬を買うらしく、これも景気がいいらしいや。真ッ昼間、一時ごろというに、昼酒をきこしめして、良きゴキゲンだったね。案内の塩竈市役所の理事さんと友達で、私の名をきくと追ッかけてきたね。私は裏参道の入口でクルリとふりむいて戻りかけていたのさ。なぜなら、青葉城以来、高
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