だろう。京家へつくと、一パイのんで九時にねむり、三時間ねて、十二時に起きた。大雪の寒い日だから、コタツをだせ、コタツの上にのせる板はないか、ガミガミやられて、京家はちぢみあがったらしいな。
京家の人たちは旅館業という客商売らしい世馴れたところがないのである。諦め深い人たちの侘び住居というようなところだ。浄ルリの合邦の婆さんみたいなのが同じような弱気の女中を二三使って、てんで能率的でない旅館業を営んでいるような感じだ。彼女らは私の怖るべき形相にすッかり困惑して、思いみだれたアゲク、だいたいここは予約の客しかとらないところだが、予約の客を全部ことわって、私と徳田君以外の客を全部しめだしてしまった。時まさに土曜日曜だというのに、まことに、どうも、こッちの意志に関係はないが、悪いことをさせたものさ。ああいう人相のわるい奴にとんでもないことでも書かれたら大変だという心配があったにしても、客をみんな締めだすというのは、尋常なことではない。人のキゲンをとるに、どこの旅館がこんな妙な方法を用いるだろうか。およそ古代人の疫病神に対するような、また、娘を大蛇の人身御供にあげるような思いきった悲しいアキラ
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