程なかなかによろしかったが、さて、ストリップというものは、ライトがあって、それがパッと消えて真ッ暗になる瞬間がないと、まことに困ったものなんだね。いまや着物が腰の下へパッと落ちるという時にパッと暗くなる。畜生め! 大事なところでライトが消えやがったとぼやくのは素人考えで、それが暗くならないと、まことにどうも、なんとも味の悪いことになるのだね。踊り子はお尻を半分露出したところで必死に着物をおさえている。そんなカッコウで颯爽と歩くことは練習していないから、暗ければ着物を手にとって大威張りで大股に歩いてひッこむだろうが、仕方がないから、前と後を両手で押えて、ずり落ちそうな着物をひきずりながら、ヘッピリ腰でモゾモゾと大きな虫のようにズリ足で幕の陰へとお急ぎになる。イヤ、どうも、きまるべきところで、きまらないと、物事は困るものなんだ。ストリップという奴は、消えるべき時に消えないと、百年の恋がさめるのさ。ここのストリッパーがさのみ芸術性ゆたかなものでなかったから良いようなものの、ヒロセ元美というようなとにかく芸で見せようという心意気なのが、お尻と前を押え着物をひきずりながらモゾモゾモゾとひッこむの
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