怪千万なものだ。大阪の言い廻しやアクセントではそれが奇ッ怪でないばかりか、シミジミと耳に快い。大阪人という性格を育て上げる重大な環境の一ツはこのような言い廻し、言葉だろうと私は思った。
反対に、エゲツなくザックバランにポンポン云う言葉が発達している。江戸ッ子はタンカをきるのが好きであるが、ポンポン云いまくる言い方は大阪がはるかに進んでいるし、表現が適確でもある。人を罵倒する無数の汚らしい言葉が発達している上に、実にエゲツなくグサリと人の弱点を突き刺す言い方が自在に口から出る仕組みになっているらしい。
東京の罵言が紋切型であるのに比べて、大阪のは、その物、その場に即して、写実的であり、臨機応変即物的に豊富多彩な言い廻しが自ら湧いてつきないという趣きがある。おまけにその口の早いこと。こればかりは生れついての大阪人でないと、よくききとることもできないし、紙上に再現することもできない。私はジャンジャン横丁やストリップ劇場などでパンパンと労働者の罵倒の仕合いや弥次の名言などを耳にし、なんとまア細いところまで適切に言いまわしていやがると大感服をすることはあっても、あんまり早口で内容が豊富で変化
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