いるところへ、檀君は食堂車でのみつづけて大虎となって現れ、一団に合流していずれへか車で去ったという。
翌日の夜、檀君に案内されてOKへ立寄ったが、おどろいたな。OKなどとはもッての外で、シャレた名にふさわしいところは一ツのない。バンカラ大学校の校内のバラック食堂だと思えばマチガイない。一流の商店街にこういう店が電燈をとめられ尚かつ営業しているリリしさは大そうだが、リリしいのは飲んだくれのお客の方で、女主人はただ実にもう好人物で、オドオドと、一向にリリしいところがないな。彼女は運命に従順であるから、お客を恨むようなところはなく、サイソクしたって無いものは無いからサイソクしてもムダだという心得やアキラメもシッカリしている。けれども電燈がつかないと困ることは確かであるから、
「ローソクは高うついてかなわんわ。早う電燈つくようにしておくれやす」
と、ボソボソ呟く。すると飲んだくれどもは返事の代りにゲタゲタと笑いたてるのである。しかも彼女はその運命を愛しているな。天も人も恨んでおらんよ。これも亦最も古風で正統的な大阪人の一ツなのかも知れない。
京家にも同様にリリしいところが一ツもないのであ
前へ
次へ
全51ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング