ことはあって、期せずしてホテルの要領を体現している。
しかし、モダニズムに縁のない昔風の大阪人というものは、これはまた歯切れのよいところがなくて面白い。つまり浄ルリの中のトツオイツ煩悶して一向にラチのあかない女、ただ運命に従うか、死ぬほかに方法を知らないような、一向に積極的な生き方をもたないのが今もなお昔ながらに存在しているのである。そういう女は案外多いのだ。
檀君の根城のOKという名前だけはパリッとした店がそのデンなのである。彼が到着した夜は、私は大阪へ持ちこした仕事のために徹夜しなければならず、外出できないし、酒ものめない。徳田君が代って檀君の待つOKへレンラクに行ったが、狐につままれたように茫然たる面持で戻ってきて、
「大変なところですよ」
「ジャンジャン横丁的ですか」
「とんでもない。近所はアカアカと電燈がついているのに、そこだけは真ッ暗ですよ。どうも変だナと思いきってはいってみたら、ローソクでやってますよ。電燈とめられちゃッたんだそうです。梅田通りの一流の土地なんですがね。まるで山寨《さんさい》ですね」
そこは某新聞記者の溜り場の一ツらしい。記者連がゴロゴロ酔いただれて
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