、むしろアベコベの意味の)ソウソウたる代表的なお嬢さん方を数名あつめてもらった。このへんは巷談師の心眼というものだ。見込みたがわず彼女は甚大の苦心を払って、至れり尽せりの人選をしてくれたのである。彼女がいかに苦心を払ったかということは、集まった娘さんたちの職業を見ると分るのである。
花柳有洸 お名前で一目リョウゼン。関西新舞踊の明星である。
村田※[#「王+旬」、第3水準1−87−93]子 デザイナー。昨年度全国コンクールで総理大臣賞受賞。まだ二十一、二だろうね。日本的な人材であろう。
佐々木雅子 このお嬢さんはしとやかで、かつ飲ン平の代表という人選であったらしい。そういうこととは知らないから、女はお酒をのんではいけません、酔うと泣きだして見苦しいものだ、と私と檀君徳田君だけ飲んでいたので、後で分った時は手おくれ、人選の任を果さぬことになってしまった。若年にして男子以上の飲ン平というお嬢さんは、私も東京に二人知っている。文藝春秋に一人。新潮に一人酒量のほどは分らなかったが、しとやかの点では東京軍惨敗。
森脇寿美子 これは文学愛好者の代表らしい。もっとも、そう文学に凝ってるわけじゃなく、ヴァイキングという同人雑誌の院外団格のようなおとなしいお嬢さんである。戦争中鹿児島へ疎開して、女学校三年生の三月ばかり前田純敬先生の授業をうけた由。それが彼女を文学に親しませる機縁になったという程度の至って文学少女的でない文学ファン。
山本節子 篤子さんの妹でミス大阪である。ミス大阪という取澄ましたところが全然なくて甚しく平凡なのが面白い。母校の帝塚山学院の幼稚園だか小学校だかで保健婦? ちがったかも知れん。とにかく、子供がころぶと赤チンを持って慌てて駈けつけたりする役目で、毎日学園内を右往左往御多忙の由である。甚だしくミス大阪らしからぬ仕事に従事している善良なお嬢さんである。
船越うつ美 行動美術に属する画家。
山本篤子 上野音楽学校卒業。松阪屋文化教室の先生。
このお二人は姐御株で、お嬢さん連に相当ニラミのきく存在らしい。
大阪はコセコセしているというが、どうだろう。非常に積極的な実利主義と同時に、長い物にはまかれろという諦めが表裏一体をなして、行動的であると同時にメソメソしたところがあり、爆笑と泣き顔がいつも一しょにチラついているような物悲しさがあるよ。男がそう
前へ
次へ
全26ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング