、あの怪物をまるめてこいと使者に立てたのだそうだ。最初の軍使は男に非ず、女であった。面勝というのは心臓に毛が生えたというような意味だろうか。天のウズメは胸もあらわに、ヘソの下に紐をたれ、ストリップの要領で天狗の先祖のところへ押しかけて行った。その次の条になると、学者の諸先生方々はこれを美しく、つまりワイセツの意味でなく解釈しようと懸命に努力されるのが例であるが、どうもムリがすぎるようだ。最も平易に解して、色ごとでギャングを手なずけたと見るのが至当のようである。よって猿田彦は天孫の先導に立ち、任終って、故郷の伊勢五十鈴川上に帰るに当り天のウズメに送ってくれと同行をもとめ、送られて帰ったという。御両氏、後日円満に夫婦の如くであったように思われる。
要するに猿田彦なる先生は、伊勢五十鈴川上に住む親分、ギャングの親玉であったらしい。垂仁天皇の朝、倭姫命《やまとひめのみこと》が霊地をさがして歩く折、猿田彦の子孫と称する者が五十鈴川上に霊地があると知らせに伺候し、かくてそこに神鏡を奉安するに至ったという。もっとも、このことを記している倭姫世記という本は信用ができない本だそうだ。
この親分に限っ
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