は、この神一ツを祀ったのではなく、同時に天神地祗あらゆる神々を各地に祀ったのであるが、伊勢と並んで大立物と目されるものに大神《オオミワ》神社、これが大国主を祀る総本山だ。石上神宮が又曲者で、これもその近いころに征服された豪族の氏神の如くであり、大倭神社なるものも強力だった国ツ神、亡びた豪族の産土《うぶすな》神の如くである。征服した各豪族の産土神を興し、その祖神を神話にとり入れて同族親類とし、人心シュウランに努めたものと思われるのである。
こういう神話の人物、いわゆる国ツ神とよばれ、天皇家以前に日本の一地域の統治者の一人であったと目せられる人物のうちで、甚しく奇怪滑稽で、おまけに最も深く伊勢と縁のあるのが猿田彦という人物だ。
神話によると、天孫降臨の時、天のヤチマタという辻に立っていたのが猿田彦。身の丈七尺、鼻が七寸、目の玉が八咫鏡《やたのかがみ》の如く、口尻が輝くというのは何のことだか分らないが、赤ホオズキの如し、何が赤ホオズキだか、とにかく天狗の先祖のような異形な先生である。
変な奴が立っているから天孫一行も行悩み、天ノウズメの命という女神に命じて、お前は面勝《オモカツ》だから
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