★
私の知っている女をいくら物色しても、太田成子嬢のようなフシギな女は見当らない。旦那が二十数ヶ所、妻女が十七ヶ所、長男(一一)が三ヶ所、長女(一〇)が十六ヶ所も薪割りで傷をうけていたという。探偵小説の常識では、こういう手口は女が犯人、ということになっている。生き返る不安におびえるのか、逆上するのか、メチャ/\に斬ったり突いたりするものだそうだ。しかし、男が必ずそうしないと断定はできない。しかし、女の子が十七ヶ所、男の子が三ヶ所というのは、女の手口のような気配がしないでもない。
これほどメチャ/\に斬りつけたのは、よほど生き返る不安を怖れたのであろうが、そのくせ二階の山口さんをなぜ訪問しなかったのだろう。四人殺して、モウ人殺しはタクサンという気持になり、オジ気づいたと見るのは当らない。これほどメチャ/\な斬り方をしながら、土足の足跡も、血のついた足跡も残していないそうである。つまり、テイネイに跡の始末をするだけの甚しく冷静な行動が次に長時間行われていたことが知り得られる。彼らは金品を探して血の海の室内をずいぶんうろついた筈なのだ。しかも足跡がなく、血のついた着物もきてお
前へ
次へ
全37ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング