でちぢらしどうも日本人ばなれがして三国人のように思われました」
 チラとのぞき見しただけで、男の服装人相だけはよく見たものですなア。自信満々たる断定。恐れ入った眼力である。多分に創作癖があるようだ。自分の眼で観察していたのではなく、後刻、必要にてらし合せて思いだしたり、創作したり、当人はそれを真実と思いこんでいるのかも知れないな。彼は翌朝九時ごろ起きたが、女中部屋に女中も男も姿はなく、フトンはキレイに四ツにたたんであったそうだ。
 前夜、女中部屋に男がいるのを見て二階へ上ろうとしたとき、女が声をかけて、親戚の者ですが泊めてもよいか、というから、女中が男をひきこむことは今までも大目に見られていたことで、奥さんが承知ならよろしいでしょうと答え、別に怪しまなかった、という。
 女中が男をひき入れたりお客をとるのが大目に見られていたというが、女中に住みこんだ当夜から男をひき入れるのは、いささか図太すぎるフルマイであろう。別におかしく思わないのは、山口さんだけではないかな。
 しかし、共犯者は問題ではない。太田成子嬢を捕えれば足りるのだ。さすれば何者が共犯者かは自然に判る事だから。

     
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