だつた。一日平均千円の収入があり(美人の若いパンパンはもつと多い。だから姐御は悲劇的だ)そのうち毎日八百円貯金して二百円で二度ゴハンをたべる。朝のゴハンはお客にたべさせてもらひ、お客と別れてきて、お風呂へ行つて、二時頃からタマリの喫茶店へブラリと現れる。彼女らは、映画なども殆ど見ないさうで、それだけ生活に退屈してゐないのぢやないかと私は思ふ。
姐御はお金をためて、やがて貿易商になるのだ、といふ。沖仲士の女親分もやりたいさうで、荷役の指図は自信があるのだと云つてゐた。然し姐御ぐらゐの年配ではこのショーバイはたのしい筈はなく、第一、顔のアラの見える明るいうちはショーバイにでられないといふやうな、姐御といふ威厳と逆な悲劇的な弱点があり、それを押してのショーバイだから、ウンザリしてゐるのも無理はない。姐御の説では、私は結婚なんてする気はないけど、若い子はみんな結婚したがつてるよ、と言ふけれども、私の見たところでは、若い子の本心は結婚などは考へておらず、姐御だけが内心は切に結婚生活を欲してゐるやうに思はれたのだ。
若いパンパンたちは、自由で、自然人で、その明るさはあるけれども、そして生活をた
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