結婚してみたくつても、とパンパン嬢も悠々たるものである。
彼女等は野天でショートタイムの営業もやらないことはないけれども、概してナジミと旅館へ泊る、たいがいナジミの客と会ふ日を約してゐて、街で知らない客を呼びとめて拾ふといふのは少いさうだ。お客は東京人よりも、地方からの商用のお上りさんで、お金はあるし、金ばなれもよい。洋服などもお客にねだつて買つてもらつて、みんな立派なナリをしてをり、ちよッとパンパンには見えないのが多い。第一営業としても、営業主に強制されたり、廻しをとつたりしないのだから、見た様子は娼婦とは雲泥の相違で、どことなく娘々したのが多い。もしも私が彼女らの一人をつれて新聞雑誌社へ乗りこんだら、ケイ眼無類の記者諸先生も、見破る筈はない。この方は何々社の婦人記者の何さんです、とやつたら、ハア、はじめまして、私は、と名刺を差上げるにきまつてゐる。いや、見破つてみせますよ、と力んでゐた記者がゐたから、あゝいふところへホンモノの令嬢をつれて行つて、色々と雑誌社を騙しなやますことを考へてゐる。然し、実際パンパンガールは陰鬱な性質のものではないのである。
私の会つた姐御は堂々たるもの
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