とも、私の会つた姐さんは別だ。もう三十五(通称三十)元々美人ぢやないところへ、やつれて、顔が物言ふ街の女のことで、明るいうち、顔のハッキリ見えるうちはショーバイにでられない、とこぼしてゐた。配下を十人以上に絶対にふやさないといふのも、この姐さんが自分の営業不振を怖れるせゐぢやないかと私には思はれたが、姐さんの配下にK子といふ美人がゐる。見たところ、いゝ家のお嬢さんみたいでパンパンのやうには見えないのだが、姐御がすゝめて結婚させた。むろん相手はナジミの客なのだが、姐御の親切が半分はあつても、自分の土地から美人のパンパンが減つてくれる方が自分に都合がいゝといふ目算も含まれてゐたんぢやないかと私には疑われた程であつた。尤もK子は一週間で古巣へ戻つてきた。
いつたい彼女らは結婚して一人の男に満足できるのだらうか、私のこの質問に、さあね、どうも御一統、自信がない様子で口ごもつたが、親分や姐御の話では、大部分は一人の亭主ぢやダメらしく、小部分はひどいヤキモチ焼で、亭主のそばヘクッついて放れなくなる。私の会つた結婚した女といふのは親分の乾分《こぶん》の一人と結婚したのだが、ヤキモチ焼で亭主にクッつ
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