実に新鮮な思想だよ。
ところが日本の職業野球では、学校で鳴らした選手でもプロに来てからは二・三年みっちり下積みをやらなきゃ一人前になれぬようにいう、そういうのは古い、イケナイ考方だよ。アメリカの大リーグの投手で野球をはじめてから一年にならんのに抜擢された奴もいる。天才はいきなりでも天才なんだ。沢村が米国の編成チームを向うにまわして活躍したのも、弱冠京商を出たばかりのときだったじゃないか。
あのときベーブルースを見たが、スケールが大きい、一流の俳優だね。一芸に達するとは恐ろしいことだ。とにかく全力を出しきっている。スタンドプレーにしても、そのプレーは堂に入っていて、しかもその遊びが決して低くない。全力を出しきって、中味が充実していることが美の要素なんだ。スピード問題にしても、そういう問題が起ったことは当然の気がする。
これからのスポーツはスピードが中心になる。昔は長距離選手は、スピードがない、短距離選手は持続しないときめられていたが、今では四百|米《メートル》の走者は最初から百米のスピードでゆく、また四百米の走者が千五百米をやらなきゃ駄目だということになって来た。四百米四六秒という
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