独逸《ドイツ》のハルビッヒの記録などを見てもスプリント走法で全コースを走っていることは明瞭だ。
古橋だって最初の百米からふっとばす泳ぎ方であの大記録を立てゝいるんだ。
なるほど佐々木基一がいうようにオリンピックの映画の高速度写真で見ると、走幅跳びでオーエンスがスピードに負けて前に倒れている。フォームの点から云えば南部忠平のほうがフォームがきれいだ。然しそれだけにオーエンスのはうが尖鋭だね。南部はフォームが完成していて、女性的だ。その点古橋は野性的で未完成のスゴミがある。
いつかチルデンが来たね。あのときはもう歳も歳で弱くなっていたが、技巧的には完成されたものだった。だけどチルデンももともとスピード選手だったんだ。日本のデヴィスカップ選手だって、佐藤次郎のような一流はスピード選手だ。藤倉なんか技巧派だから、一流になれない。しかしオーエンスなどは決して技巧的に完成しない人間だね。技巧を完成するためには、スピードを殺さねばならぬ。
ボクもスピード論で、持続論はきらいだ。スピードのあるのが持続するというのがスポーツの本義だ。そうなると、今度は選手の寿命が問題だがね。大体スピード選手は不
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