も文学にも人生にも救いなんか求めてはいない。
 小林秀雄はボクとは逆でね、だからあんなに骨董などいじっている。あいつはバカだよ。文学や骨董に救いがあると思ってやがるんだから。あと十年も経つとボクも彼と同じように骨董いじりをするようになるから、まあ見てろ、と彼は言うが、ボクは絶対に骨董なんかいじらんよ。
 但し、ボクは現実的なことは考えている。世の中の貧乏とか社会制度の欠陥とかはね。その点ボクはとてもリアルなんだ。現実のことは現出天的に処理するより外に道はないんで、その事に関してなら、ボクは政治第一主義を取る。ボクのそんな方面は誰も気づかないようだが、ボクは少年のときから政治を考えているよ。
 政治というものは常に国民の現実的幸福を考えねばいけないんだ。アメリカなんて国はそんなにすぐれているとは思わないが、少くとも日本よりはいゝ、というのはアメリカの歴代の大統領は民衆の生活を高めるという政策を第一にかゝげている。日本の政党にはそんなのがない。だから本当に高い政治は行われたためしがないんだ。
 日本共産党にしても日本政治の全体的な構想を考えていないと思われる。国内で政策をやることを考えてい
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