。私はしばらく、目を閉じていた。私は自然、うなだれてしまった。私の心は寒々と澄んだ。むなしく、ひろく、何もなかった。こんなものか、と私は思った。なんの感動もなければ、悔いもない。
そして私は、握りしめたものを、胸にきつく押しつけた。心臓からの血しぶきが、胸のワイシャツに赤々とあふれ出た。
私はのめろうとする上体を起して、ヤス子をボンヤリ眺めていた。ヤス子は恐怖と驚愕にすくんだが、今にも私めがけて飛びつこうとするときに、私はガックリのめってしまった。
「三船さん、バカ、バカ」
私を抱き起そうとしたが、にわかに私の耳に口を当てて、
「シッカリして。今、医者をよびます。そんな、そんな、子供じみたことを」
私は顔をあげた。同時に、からだを起した。私は無言、呆気にとられるヤス子を見つめ、そして、ヤス子の手を静かにとって、ゆっくりと甲に接吻した。
「ヤス子さん。ごめんなさい。死ぬマネをしてみたのですよ。でも、ちょッと、死んだような気もしましたよ。ゴムフーセンに入れた赤インキですよ」
ヤス子は思いのこもった鋭い視線で私を睨んでいたが、私は平然たるものである。
「ヤス子さん、事の結果が、あな
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