たをバカにしているようですが、そんな気持じゃないのです。私は私のバカさ加減をお目にかけるつもりだったのです。私は軽蔑されようと思ったのです。その意味を御存知ですか。私の一生はピエロなんです。私はそれをハッキリ自覚しているのです。それは世間にはピエロを自認するニヒリストは有り余るほどおりますよ。然し、彼らがピエロでしょうか。ウソですよ。みんな自尊心が強くって、そのアガキの果に、マジナイみたいにピエロ気取りでいるだけですよ。私は、自尊心がないのです。ですから、ピエロ、下僕ですよ。私は尊敬し、愛するものに、すべてをあげて奉仕すれば足りるのですよ。私はあなたに軽蔑されてもよろしいのです。それでもマゴコロをさゝげています。踏んづけられても蹴られても、やっぱりマゴコロをさゝげて、かりそめにも仕返しなどは致しません。どうせ、それだけのものなんだから、ひとつ、と、私は今朝ふと思ったのです。急に自殺のマネをしてみようと思ったのです。実際、死んでもよかったのです。まったく、そうでした。私は胸のインキのタマを握りしめていたとき、死ぬマネをするなどゝは思わず、実際、短刀を握りしめているのと変りのない気持になっ
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