糖だバタアだ醤油だ米だとチョイ/\差上げるのを狎れてきて、まるで当り前のように、今度は何をとサイソクする。私を三下奴《さんしたやっこ》のように心得ている。先方がこうでるようになればシメタもので、私の方はサギにかけよう、今に大きくモトデを取り返してやろう、そんな金モウケはミジンも考えていないのだから、相手が私をなめてくれると、友達になったシルシのように考えるだけの話なのである。
なめられる、ということは、つまり相手が私に近づいてくれたことなのである。さしずめ、私は、もう背中を流してやることができるわけで、女の場合なら、その肌に近づいたというシルシなのだ。
だから、私は、わざと、こうやって犬馬の労をつくすからは、私だけ、ということはないでしょう、私にも、なにかモウケさせて下さいな、と云って、大浦博士の文章をいたゞいて、新聞や雑誌にのせる。精神病だの婦人科だの法医学などゝ違って、内臓外科、こんなものゝ文章は当節は一向に読み物にはならず、大博士の文章でも、もらって有難メイワクであるが、そんなソブリはいさゝかも見せず、たゞもう嬉しがり、恩に感じて見せるのである。
その返礼は何か、というと、
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