事に当る、最も、貴様らの光栄の至りであるぞ。よし、礼!」
 そして、秘書をしたがえて、悠々と出て行った。

          ★

 思いよらざることになった。
「花田さん、ひどいわねえ。唐は中国だったなんて、そんなこと、でも、ひどいわ。ずいぶん、侮辱じゃないの」
「オイ、オイ、スミマセン、アナタ。そんな、個人的な感情問題じゃないぜ」
 と一同を制したのは、一番年の若い、然し、さすがに銀行員上りの、一同の中で一番物の道理の分った堅木という会計係であった。
「カストリ社の運命や、いかに」
「うん、まったくだ。あんな奴に、のさばられちゃ、かなわねえよ、なア。オレは、こんなエロ雑誌はあんまり性に合わねえけど、然し、オレは、詩人だからネ、オレは古くないから、食うためにエロ雑誌をやる、女に生れたら、パンパンやったって、いいんだ。詩をつくりゃ、いゝじゃねえか。だから、オレがこんなカストリ雑誌の記者であるということは、つまり、パンパンの精神なんだ。でもよ。車組の検閲雑誌は、いけねえよ。いったい、アイツは、わが社の、何のつもりなんだ」
「つまり、社長のつもりだろうな」
 一同は花田をジロリと睨み、社
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