ラムネ氏のこと
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)訛《なまり》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)海抜千百|米《メートル》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たま/\
−−
上
小林秀雄と島木健作が小田原へ鮎釣りに来て、三好達治の家で鮎を肴に食事のうち、談たま/\ラムネに及んで、ラムネの玉がチョロ/\と吹きあげられて蓋になるのを発明した奴が、あれ一つ発明したゞけで往生を遂げてしまつたとすれば、をかしな奴だと小林が言ふ。
すると三好が居ずまひを正して我々を見渡しながら、ラムネの玉を発明した人の名前は分つてゐるぜ、と言ひだした。
ラムネは一般にレモネードの訛《なまり》だと言はれてゐるが、さうぢやない。ラムネはラムネー氏なる人物が発明に及んだからラムネと言ふ。これはフランスの辞書にもちやんと載つてゐる事実なのだ、と自信満々たる断言なのである。早速ありあはせの辞書を調べたが、ラムネー氏は現れない。ラムネの玉にラムネー氏とは話が巧すぎるといふので三人大笑したが、三好達治は憤然
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