」とはねつけたのであります。
ザヴィエルは、こう云われて、諦らめてしまいまして、山口へ帰ったのであります。ザヴィエルはそこで考えました。――もう将軍に会っても、こんな混乱した時代じゃ意味がない、会ったって無駄だ。贈り物も将軍なんかにはやらない、山口の殿様にやってしまおう。――
ザヴィエルは贈り物を山口の殿様に呈上することに極めましたが、前に将軍にあって懲りたことがありますから、今度は身なりに気をつけました。
きらびやかに盛装をいたしまして、山口の殿様に会い、贈り物をすると、殿様のほうではその威容に打たれまして、尊敬の念をおこしました。そうして直ぐに、布教の許可をもらうことが出来たのであります。盛装と贈り物がモノを云ったことになります。
それから、ちょうどこの頃のことでありますが、例の豊後と申す土地へ、ポルトガルの商船が一艇やってまいったのであります。もっとこまかく申しますと、豊後の府内というところの直ぐそばにある臼杵(ウスキ)と申す所へ参ったのであります。
このポルトガルの商船のなかで、東洋の布教師であるフランシスコ・ザヴィエルが山口に来ているという話だから、一つ呼ぼうではな
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