強盗にやられた家へ警官がとびこんだ。犯人を追っかけ廻して時間がかゝったために、助かるべき被害者の手当がおくれて死んだことがあり、この警官が、被害者を殺したよりも犯人を逃したことを残念がっていたという記事があった。この警察の在り方についても輿論の反響はなかったようだ。
 帝銀事件の犯人のタイホがおくれてもかまわぬ。民主警察の確立、岡ッ引根性の絶滅の方がどれだけ重大だか計り知れない。

     ストその他

 私の四囲の小資本の出版業者などでは、編輯者の給料が千八百円を下まわるようなところまである。あんまり気の毒で、せめて三千円ぐらいなけや生活できないからと私が社長にかけあってやったこともあった。
 こんな小会社では争議を起せばクビになるばかりだから、争議も起されぬ。これは気の毒なことである。
 反対に、全逓《ぜんてい》などというところは、ストが有力な武器になる。そこでストをやる。問題は、この連中がもしストが武器にならずクビになるだけなら、ストはやらないということだ。当然の要求もできないというのも良くないことだし、ストを武器に便乗するというのもよろしくない。
 大切なことは、主観的ではい
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