が独特な技法なんだよ。急所急所を足でふみつけて行くんだけれど、それだけで病気が治る人もあるよ」
「あとでサービスしてあげる。サービスしても、せなんでも、一人百円。人助けのためにしていることだから、難病が三日で治った、先生、ありがとう、こう云われゝば、胸がはれる。何百万円つんだとて、気のむかん時には、してはやらぬ。東京の人はひねくれておる。素直なところが欠けておる。これが何より治療にわるい。私の言う通り、される通り、ハイ、ハイ、云うとれば、どんな病気も治してあげる。あんたがどんな偉い人かは知らんが、この婆アに足で頭を踏みつけられた、腹が立つ、帰れ、ハア、帰りましょう、ハイ、サヨナラ、それだけのことじゃ」
 この婆さんの温灸というのは、由来書の通りに云えば、菅平高原から採取している十何種かの高山植物と、動物のホルモン等々をねり合せた黒色のウニのようなものをガーゼの上へ一センチぐらいの厚さにつみ、その上へモグサを山ともりあげて燃すのである。黒色のウニのようなものが多分に液汁を含んでいるから、それが燃えない限り、さのみ熱くはなく、熱くなると、やめるという仕掛けで、終るまでに一時間ぐらいはかゝる
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