バラ、ガラガラとタケノコがふりこめており、たまにはそれを抑えたり投げたりして別世界の人のように格闘している人の姿も見えはしたが、通行人たちはニワカ雨のハレマを見て歩いているという様子でしかなかった。頭の真上に焼夷ダンが落ちて大の字になって威張って死んでる男がいた。通行人の一人が死人の腰にくくりつけた弁当包みを手にのせてみて、
「まだ弁当食ってねえや」
ほかの通行人たちの顔を見まわしてニヤリと笑って言やアがった。この時は薄気味わるかったね。オレがまだこの通行人ほど正直でないような気がして、そこまで正直にさせないと気がすまないような戦争という飛んでもないデカダン野郎に重ね重ねのウラミツラミがよみがえったようだった。しかし、そういうことにシゲキされていくらか理性だか正気のようなものの影がさしてハッとすることがあったけれども、すぐ目の前で小さなバクダンの筒に頭を砕かれて大の字にひッくり返って死んだ人間については全然無感動であったと云ってよい。雨に打たれて誰かが死んだ。それがオレでなかっただけの話にすぎないのである。
小平某という奴があの最中に女の子を強姦しては殺していたという。あの最中に人
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