だけ考へ、燃焼させるだけ燃焼させた材料を、蒸気のカマの蒸気の如く圧縮して噴出させて表現するやうな方法なのだから、イザ書く時には五日間ぐらゐなら、眠らずに書きあげたいのだ。芸術の表現と生命の燃焼が同時であつて、それで仆れるものなら、私は仆れても構はないので、私は私の死後などは考へてゐない。
然し私もむろん健康には人並以上に注意をしてをるので、私はつまり一般的な方法で注意をせずに、私だけの体質気質に相応した独自な手法、で注意してゐるのだが、それが独自だから、私の注意が他の人々に分らないだけのことだ。
たとへばカストリを飲むといふことも私の注意の一つなのだ。ウヰスキーは胃を痛め、酒は薄すぎる。それで不味を覚悟でカストリをのむ。私がもし私の味覚に溺れて上品な酒をのむなら、私はむしろ身体をこはすに相違ない。
私は仕事中はねむらぬ。だから、仕事のあとでは出来るだけムダなくねむりたい。そのために酔ひつぶれてその場へ仆れて眠れる場所をさがす。これも私の注意だ。私はチトセで酔ひつぶれ、朝目がさめて、少し飲んで、又、ねてしまふ。仕事をしない時間は、できるだけ、ねむる。だから、私にとつて眠ることがどん
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