ーがあるといふから買ひにやつた。百五十円だといふのだ。あんまり安すぎる。危険だから止さうと話がきまつたのだが、そのうちヨリタカがふと思ひだして、買つてこよう、死んでもいゝや飲もう。このときは私も呆れた。まつたく見上げた魂だ。言ふまでもなく私は彼を思ひとゞまらせたけれども、かういふ豪傑ぞろひの東京新聞だから、彼らの生命ある限り、私の方が先に死ぬといふ心配はないのである。
私は酔ひつぶれて寝てしまひたいための酒であるから、近頃は新宿のチトセでのむ。この店の主人は私の古い友達で、作家の谷丹三だ。チトセはもと向島の百花園にあつた古い料亭だが、焼けて、新宿へこしてきたので、焼けない前から私にはナヂミの店で、酔ひつぶれると、私は座敷へそのまゝ寝てしまふ。ひどく都合がいゝ。このチトセにも、私は私の胃袋に合はせてカストリを用意してもらつたが、近頃はこの店に限らず、東京全体カストリの質が落ちて、ひどく鼻について、飲めなくなつてきた。
薬をのんで仕事をするといふのは無理がある。先日、ヒロポンに就て書いて以来多くの人々からさう言はれるが、芸術の仕事は必ずしも一概にさうは言へないもの、私の場合、私は考へる
前へ
次へ
全9ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング