のからだの中で、誰よりも」
「あら、うそよ。だつて、とても、可愛く、毛深いわ」
 私は私の女の生殖器の構造に就て、今にも逐一語りたいやうな、低い心になるのであつたが、私自身がもはやそれだけの屑のやうな生殖器にすぎないことを考へ、私はともかく私の女に最後の侮辱を加へることを抑へてゐる私自身の惨めな努力を心に寒々と突き放してゐた。
「君は何人の男を知つた?」
「ねえ、マダムのあれ、どんな風なの? ごまかさないで、教へてよ」
「君のを、教へてやらうか」
「えゝ」
 女は変に自信をくづさずに、ギラ/\した眼で笑つて私を見つめてゐる。
 私はそのときふと思つた。それは女のギラ/\してゐる眼のせゐだつた。私はスタンドの汚い女を思つたのだ。あの女は酔つ払ふといつも生殖器の話をした。男の、又、女の。そして、私に泊らないかと言ふ時には、いつもギラ/\した眼で笑つてゐた。
 私は今度こそあのスタンドへ泊らうと思つた。一番汚いところまで、行けるところまで行つてやれ。そして最後にどうなるか、それはもう、俺は知らない。

          ★

 私はあの夜更にスタンドを追ひだされて以来、その店へ酒を飲みに行
前へ 次へ
全40ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング